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技術研究所外部評価制度 詳細

平成15年 第2回技術研究所外部評価の結果のご報告

 平成15年12月4日、技術研究所において外部評価が実施されました。外部評価委員は岩田一明大阪大学名誉教授を始めとする産・官・学からなる計5名の方々でした。今回の外部評価は第2回ということから、その評価対象を研究分野に絞り、平成14年度で終了した研究テーマ1件、15年度から現在進行中の研究テーマ2件、16年度から実施計画中の研究テーマ4件、の計7件と致しました。

評価対象の研究テーマ:7件

研究テーマ名研究の概要

(a)IT応用生産システムに関する研究

中小企業では、受注変動に対し、昼間に人手で少数量を、夜間に自動化してまとまった数量を製造しているが、近年の顕著な受注変動は、従来方法の継続を困難にしている。一方、工作機械の監視や保守の分野でITが利用されつつあるが、これらは各ベンダが自社製品用に開発しており、マルチベンダ環境に未対応である。また、中小企業の普段の生産を支援するシステムは少ない。そこで、手作業と自動工程の共存により受注変動に対応する中小企業向けのマルチベンダ生産システムを検討し、その運用をITで支援する生産支援システムを構築する。

(b)グローバル生産における中小企業支援システムに関する研究

従来の企業系列や特定地域内に限定した調達や生産から、世界中に分散した企業から自由に調達したりして生産を行うグローバル生産が普及しつつある。現在、これへの参画は、大企業が中心であり、情報統一、管理システムの確立が未完成な中小企業では不十分である。この状況は、中小企業がグローバル生産に参画し、競争力を維持する上で障害となっている。そこで、受発注などの企業間連携のための情報システムとMES(製造実行システム)、MESと機器との情報交換技術を研究し、中小企業がグローバル生産に参画するための基盤技術を構築する。また、IT応用生産システムに関する研究(平成12~14年度)で構築した遠隔監視・保守技術や生産システムの評価技術を、グローバル生産で応用利用する仕組みを研究する。

(c)IT産業に使用される難加工材料の微細精密加工技術に関する研究

電子・光技術の革新によるITの発展が目覚ましい。ところが、ITに使用されている部品の多くは、小さく微細なため加工が極めて困難であり、熟練者の勘と経験に強く依存している。そこで、加工現場で解決が迫られている材料の微細加工技術について研究する。具体的には、IT産業に多く使用されているコバール(Ni29-Co17-Fe53合金)を主に、微細放電加工と微細穴ドリル加工における加工条件と加工結果(工具磨耗・加工表面・加工精度など)ついて研究をし、加工データを整備する。

(d)難加工材料の超音波援用微細穴ドリル加工技術

携帯情報端末をはじめとする電子機器製品の小型化が進んでいる。これらに使用される部品は微小なうえに、難加工材料と呼ばれるものが多く、さらに、部品の使用用途によっては、加工液を使用できない場合もあり、慣用の加工では限界がある。また、将来的に光ファイバによるネットワークの完成が期待されていることから、光ファイバと熱膨張率が近いコバール材(Ni29-Co17-Fe53合金)の機械加工の需要が今後予想される。しかし、難加工材料の加工条件・加工ノウハウについては、公開されている情報が非常に少ない。そこで、コバール材を主に、超音波を援用した微細穴ドリル加工技術について研究する。

(e)硬脆材料の超精密切削加工

レーザプリンタの心臓部であるポリゴンミラーに代表される金属鏡の製造方法は、超精密切削技術の向上とともに研削・研磨加工等で仕上げられている。ガラス等の延性切削による仕上げ加工が可能になれば、金属鏡同様に加工能率の高いダイヤモンド切削が主流になることは十分予想される。本研究では、研削及びフライス加工の特徴を取り入れた加工形態および工具形状を導入して最適条件を探り出し、硬脆材料(ガラス)の切削加工実用化を目指す。

(f)現場環境における三次元測定機の高精度化に関する研究

製造業に対する三次元測定機の普及度は極めて高くなってきている。また、三次元測定機の使用状況の調査結果から、中小企業における三次元測定機の設置環境は22℃±5℃程度で使用されており、測定機としては過酷な環境に置かれる場合が多くなってきている。しかし、過酷な環境においても測定精度への要求はますます高くなってきている。そこで、本研究では三次元測定技術を取り上げ、現場環境の調査と並行し、過酷な環境においても高精度化が実現できる方法を検討し、その基礎情報を提案する。

(g)超精密研削用砥石の開発

現在、表面粗さ数nmp-vで無歪みな清浄面を創成するには研磨加工が用いられている。しかし、研磨加工では生産性の低さと環境への負荷が問題となっており、超精密研削加工に期待が寄せられている。超精密研削加工ではナノレベルの精度、高い剛性を持つ装置開発が進められているが、砥石開発の方が遅れており、創成面の品位は研磨加工に遠く及ばないのが現状である。一方、天然砥石に目を向けると、荒から仕上げまで幾種類もの砥石がある。本研究では天然砥石の構造を理解し、超精密研削により適した砥石構造を求め、現在、研磨加工により行われている仕上げ工程を研削加工に置き換えられるような砥石を開発することを目的とする。

   11月末に提出された指摘事項、5点評価による評価結果は以下の通りです。

(評価基準:5:非常に優れている、4:優れている、3:ほぼ適正である(普通)、2:改善すべきである(劣っている)、1:全面的に見直すべきである(極めて劣る))

 

(1) 評価に関する総合意見

 前回の第1回に比べて相対的に記入内容の改善が見られる。しかしながら、いま少し内容の詳細な資料が必要である。特に現状の技術水準に関する記述が求められる。新規の事前評価に関しては担当者との対面調査が望ましい。研究期間に関して、テーマによってはより短い単位で成果を出せるよう留意する必要がある。

 

(2) 個別の研究に対する評価

(a)IT応用生産システムに関する研究(最終評価)

 総合的に見て当初の目的を達成したと判断される。この研究成果を具体的に中小企業に普及させる努力が必要である。特にどのような業種・産業に対してマッチするかの検証が課題と言える。実用化にあたっては簡易化など修正も含めて考えたい。また、特許取得も視野に入れた検討が必要である。(評価点:4.1)

  (b)グローバル生産における中小企業支援システムに関する研究(中間評価)

 近年の生産形態の多様化に伴い、中小企業と明記する必要性は薄い。中小企業の実態を十分に把握し、それに対応できる内容が必要である。開発ユニットは最大限汎用のものを利用、モジュール化し、適用範囲の拡大が望まれる。さらに、現場での具体的な適用例の積み重ねが重要である。(評価点:3.5)

  (c)IT産業に使用される難加工材料の微細精密加工技術に関する研究(中間評価)

 採取データの厚みが本研究の特徴として必要である。ユーザが必要とする付加価値の高いデータを提供することが本課題では特に重要である。微細穴加工の加工条件評価の1つとして形状精度の評価が大切であり、付加する必要がある。また、工具に関する情報が本研究には不可欠。他材料への発展も視野に入れて検討を進めたい。(評価点:3.2)

  (d)難加工材料の超音波援用微細穴ドリル加工技術(事前評価)

 現状の技術レベルを整理し、本研究の位置付けを明確にする必要がある。環境問題を考慮すれば超音波援用を目指す方向は良い。微細穴加工に共通の課題は加工精度の評価方法であり、前研究とあわせ、検討が必要である。また、前研究と同じくデータの厚みが問われる。(評価点:3.3)

  (e)硬脆材料の超精密切削加工(事前評価)

 実用化の判断基準が問われる分野の研究であり、他との差別化も含めて目標を明確にする必要がある。独自のアイデアが示せるように努力することが望まれる。本当に過去の研究結果の限界を超えることが出来るかどうかが問われる。(評価点:3.2)

  (f)現場環境における三次元測定機の高精度化に関する研究(事前評価)

 本研究に関する各界の関心は高く、成果が期待される。測定機メーカ、ユーザの両者への貢献が考えられ、それらを十分に整理して研究にあたる必要がある。現場で使える安価かつ簡易な評価方法の確立が重要であり、第一段階としては、そこに的を絞って研究を進めて欲しい。(評価点:3.7)

  (g)超精密研削用砥石の開発(事前評価)

 面白い研究テーマといえる。研究範囲は広く時間もかかることが予想される。したがって、計画は出来うる限り具体的かつ詳細に、また実施可能な範囲で立案する必要があろう。過去の研究の成果を十分精査し、研究の特徴を明らかにする必要がある。実用化に絡み、特許の取得も考慮に入れる必要がある。(評価点:3.6)

 

 以上のように全体としては良いご評価をいただきましたが、評価の効果を高めるためにはさらに改善の余地があるとのご指摘もいただきました。当所としましては、これらの指摘事項を改善し、評価を実施することによる研究内容の充実に努め、皆様のお役に立つ事業を進めて参る所存です。