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技術研究所外部評価制度 詳細

平成13年 第1回技術研究所外部評価の結果のご報告

 平成13年9月28日、技術研究所において初めての外部評価が実施されました。外部評価委員は岩田一明大阪大学名誉教授を始めとする産・官・学からなる計5名の方々でした。今回の外部評価は第1回ということから、その評価対象を絞り、新規研究テーマ4件、受託業務全般と致しました。

 10月末に提出された最終的な指摘事項、5点評価による最終評価結果は以下の通りです。

 (評価基準:5:非常に優れている、4:優れている、3:ほぼ適正である(普通)、2:改善すべきである(劣っている)、1:全面的に見直すべきである(極めて劣る))

(1)受託業務について

 限られた人材、資材、設備等の中でより効果的な仕事を行えるように技術研究所全体からみた受託業務のあり方について今後、検討することが望まれる。他機関で実施されている業務の整理、分担役割の明確化、連携の促進など、技術研究所しかできない、あるいは独自性の高い事業に特化していく必要がある。標準供給のような事業は、今後とも重要であり、促進してほしい。また、研究との関連性にも配慮しながら業務を進めていくのがよいと思われる。

(2)研究テーマについて

(a)硬脆材料の超精密延性加工技術の研究 <研究概要>

 比較的面白いテーマである。過去の研究成果との差異を明確にするため、十分なサーベイが必要である。研究に関して目標を総花的でなく、絞り込む必要がある。またどの部分に独自性(アイデア、仮説、手法)があるかを明確に示す必要がある。具体化するに当たり目標数値の設定が必要(実用化限界)と思われる。

(評価点:3.5)

 

(b)多自由度ステージ機構の開発研究 <研究概要>

 研究対象とするパラレルメカニズムの新規性が明確でない。新規アイデアがあれば、その有効性、特許性に関して考慮する必要がある。またその応用分野に対する明確な位置付け、具体的な研究手法を明示する必要がある。現在の技術レベルと比較してどこまで行くか、が必要である。
 具体的に進めるに際しては、対象を拡散することなく、要素のみに絞る方が良いと思われる。

(評価点:3.1)

 

(c)CGスクエア技術(サイクロイド系歯型の歯車加工技術)の研究 <研究概要>

 歯車の研究は古くよりあり、ここでは制御方法、高速研削技術などに的を絞り実施する必要がある。その際、従来技術との差異を明確に示す必要がある。そのための聞取り調査が必要。実施にあたり総合的な数値評価(サイクロイド歯車導入による機械装置全体に対する有効性、効率向上度)を行う必要がある。また数値目標も示せれば良いと思われる。さらに実証のための実例が最後に欲しい。

(評価点:3.4)

 

(d)三次元測定機による測定の不確かさに関する研究 <研究概要>

 全体的な意義は認められるが、具体的なアウトプットが不明確である。評価方法の確立、開発が本来の趣旨と思われる。実用性は高く、産業界と密接に実施され、工業界に有益となる結果が出ることを望む。

(評価点:4.1)

 

 以上のように全体としては良いご評価をいただきましたが、具体的な実施方法に関しては厳しいご指摘もいただきました。当所としましては、これらのご指摘事項を踏まえ、改善すべき所を修正し、具体的な研究を遂行して皆々様のお役に立つ事業・研究を進めて参る所存です。

 

新規研究テーマ:4件

研究テーマ名研究の概要

(a)硬脆材料の超精密延性加工技術の研究

 レーザプリンタの心臓部であるポリゴンミラーに代表される金属鏡の製造方法は、超精密切削技術の向上と共に研削・研磨加工からダイヤモンド切削に移行した。硬脆材料はいまだに研削・研磨加工で仕上げられており、延性切削が可能になれば金属鏡同様に加工能率の高いダイヤモンド切削が主流となることは自明である。代表的な硬脆材料のガラスは0.1μm以下の切取り厚さでは延性切削可能だが、高剛性高精度な機械を必要とし、激しい工具摩耗を伴うために実用化が阻まれている。

 本研究所で開発した超精密加工機を用い、ダイヤモンド工具の摩耗原因を探求し対策を講じる。最終的にはガラス材料におけるダイヤモンド延性切削加工において工具の長寿命化を図り、産業化が可能になるレベルまで向上させる。

(b)多自由度ステージ機構の開発研究

 製造技術は、日本の生命線ともいうべき経済力の源泉であり、我が国のみ実現可能な高精度加工技術が存在するなど、世界的にも最高水準にある。加工技術に対する要求精度も、現在では数ナノ(10億分の1)メートルオーダといった超高精度が求められている。しかし、従来技術のみで超高精度を達成しようとすると、精度向上に伴ってメカニズムが非常に複雑になり、装置が大型、高価格となる、等の欠点がある。

 開発を行う多自由度ステージ(製造装置のキーコンポーネントの一つ)は、新機構(パラレルメカニズム)と従来機構を組み合わせたハイブリット構造とすることで小型化し、新原理に基づく超音波モータのダイレクト駆動により、高速で高精度なナノメートルオーダの位置決め、メカニズム構造の単純化、低価格化を目指す。

(c) CGスクエア技術(サイクロイド系歯型の歯車加工技術)の研究

 近年ではバリアフリー化の流れを受けて、肢体不自由者の機能を補填するための装置や、寝たきりの方の介助を目的とした介助支援装置などの開発がさかんに行われている。しかし、これらの装置には、モータの力を倍増させるための減速装置が必須となる場合が多いのであるが、コンパクトでしかも、摩擦損失が少なく、大きな減速比を稼げる高性能な減速装置が見当たらないのが現状である。

 また、最近注目を浴びている二足歩行ロボットにおいても、高性能な減速装置がないことから、制御そのものを難しくし、摩擦力による損失をカバーするために、より大きなバッテリーを搭載しなくてはならない原因となっている。

 本研究では、転がり接触を基本とするため、大幅な摩擦力の低下が期待でき、高性能な減速装置を構成することができるサイクロイド歯車を、効率よく加工するための装置の開発を行う。

(d)三次元測定機による測定の不確かさに関する研究

 産業のグローバル化により、取引のための評価基準が必要となる。寸法・形状の評価に利便性から三次元測定機が広く利用されている。この測定機のトレーサビリティ体系確立に関し、産業界側からアプローチする。