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故障の影響解析(FMEA)と、故障の木解析(FTA)の活用 詳細

FT図の作成方法

-FT図の作成-

FT図の作成は、以下の手順により行っていきます。



ステップ1: 解析対象を理解します。
製品を手にとって確認すると共に、設計報告書、製造図面、および取り扱い説明書等を参考に、製品の「機能・性能要求」、「信頼性・安全要求」、「使用条件」、「環境条件」を理解します。
ステップ2: 対象としている製品の故障、および製品による事故より、トップ事象を設定します。
過去の事例を参考に想定される「故障」、「事故」をすべて挙げます。
ステップ3: トップ事象から推定される第一レベルの事象を識別します。
「故障」、「事故」の影響をすべて挙げます。
ステップ4: トップ事象と第一事象を論理記号で関連付けます。
「ORゲート」、「ANDゲート」、「組合せゲート」、「制約ゲート」で関連付けます。
ステップ5: さらに下位の事象を識別し、その上位事象と論理記号で関連付けます。
ステップ6: 事象が「基本事象」、「非展開事象」のレベルに達したら展開を終了します。
ここで挙げた事象が、 「基本事象」、「非展開事象」、「通常事象」のどれにあたるかを判断します。
定量的な解析が必要な場合にステップ7に進みます。詳細は、「次回のプール代数による確率計算と最小カットセット」で説明します。
ステップ7: 定量的な評価が必要な場合は、各事象ごとに故障率を割り当て製品の故障の発生確率を求めます。
故障率: 動く部分を持たない機構部品の故障率は0.とし、動く部分を持つ機構部品、圧力容器等の故障率は、実績データを使います。一方、機械製品中に電気部品が使われている場合は、MIL-HDBK-217(米国防総省信頼度予測モデル)等を使って故障率を計算します。ただし、この電気部品が定格(決められた能力)に対して十分余裕を持って使われている条件とします。

-FT図の作成の例-

下図に示す「線材巻き取り機」のFTAを作成してみましょう。「FT図の作成例(回転体の破損)」に作成の流れを示したFT図を示します。

ステップ1: 解析対象を理解します。
→この場合下記に示す写真より
「一定の回転力で回転し、トラバースしながら線材を巻き取っていく回転体であり、線のサイズによりますが、φ15の線材を50m程度巻き取ることが可能である」ことを理解します。

ステップ2: 対象としている製品の故障、および製品による事故より、トップ事象を設定します。
→線材巻取り機の一番大きな不具合は、「線材が巻き取れない」ことです。この事象にいたる故障は、「回転体の停止」、「回転体の破損」、「回転体の動作異常」等考えられますが、ここでは「回転体の破損」を考えて見ましょう。
ステップ3: トップ事象から推定される第一レベルの事象を識別します。
→回転体が破損する原因として「使用材料の劣化による破損」と、「異常回転による破損」を展開事象として識別しました。
ステップ4: トップ事象と第一レベルの事象を論理記号で関連付けます。
→「使用材料の劣化による破損」と、「異常回転による破損」がそれぞれ単独におきても「回転体は破損する」ため「トップ事象」と「第一事象」を「ORゲート」で関連付けました。

ステップ5: さらに下位の事象を識別し、その上位事象と論理記号で関連付けます。
→「使用材料の劣化による破損 」を 基本事象の「さび」と、「亀裂」として識別しました。
→「異常回転による破損」を基本事象の 「制御装置の故障」と、「電源の故障」。展開事象の「計装配線のショート」として識別しました。
ステップ6: 事象が基本事象、非展開事象のレベルに達したら展開を終了します。
→「制御装置の故障」と「電源の故障」は基本事象のため展開を終了しました。
→しかし、 「計装配線のショート」は 、もうこれ以上展開できない否展開事象の「雨水による漏電」として識別できるため、展開を継続し、この段階ですべての事象の展開を終了しました。
ステップ7: ここでは示しませんが、定量的な評価が必要な場合は、各事象ごとの故障率を割り当て製品の故障の発生確率を求めます。

図 FT図の作成例(回転体の破損)