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機械製品に対する安全要求と設計方法

第17回 安全性試験-高度試験、温度試験、加速度試験、衝撃試験、振動試験-

※安全性試験:リスク(人への危害または製品の損傷の危険性) が、許容可能な水準に抑えられることを確信する。

※信頼性試験:与えられた条件下で、与えられた期間、要求機能・性能を遂行できることを確認する。

1.高度試験

1.1 目的

高度試験は使用時において遭遇するであろう高度条件(気圧の減少)を現出しこれに対する試験体の性能を評価することにより安全、信頼性、品質の確証を得ることを目的とする。

1.2 使用装置

真空試験装置

1.3 試験方法

試験体を真空試験装置のベルジャ内に設置し規定の圧力まで減圧して規定の時間保持し、同時にベルジャ内の真空度をモニタし記録する。

1.4 高度試験による許容差

真空度:±10%

1.5 試験体の設置

試験体を真空試験装置のベルジャ内に設置する。

以下に示すようなアウトガスがでるものはベルジャ内での使用を避ける。

 ビニールテープ、表示紙、ビニール線、綿テープ、紙、布類等

図1-1 高度試験装置
(出典:OKIエンジニアリング)

1.6 試験体の動作

試験体は試験中動作させ高度試験による機能・性能上の影響が評価できるようにする。

1.7 試験体の評価

(1)試験前の性能試験と外観検査

試験の実施に先立って、試験体を標準状態(温度:25℃+5.-10℃、相対湿度:85%以下、大気圧725+50、-75mmHg)の周囲条件に置き、性能試験と外観検査を行い、データを取得する。外観検査は図面を用いて、キズやムラの状態を記録する。

ここで取得したデータは安全性試験実施中や後で試験体の性能チェックの基準とする。

 注1:アーク放電やコロナ放電により生じる不規則な動作や誤動作には特に注意を払う。

 注2:高圧を使用している試験体の異常放電には特に注意を払う。


(2)試験中の性能確認

試験体の性能を連続的もしくは、ある一定間隔で取得し、(1)で実施したデータと比較し、異常がないことを確認する。

(3)試験後の性能確認と外観検査

試験終了後、(1)と同様のデータを取得し試験中の環境条件により機械的・電気的劣化が生じていないかを確認する。

1.8 高度試験フロー

2.温度試験

2.1 目的

温度試験は使用時において遭遇するであろう温度条件(高温度、低温度)を現出しこれに対する試験体の性能を評価することにより安全、信頼性、品質の確証を得ることを目的とする。

2.2 使用装置

温度試験装置(恒温槽)

2.3 試験方法

試験体を恒温槽内に設置し規定の温度シーケンスで規定の時間保持し、同時に恒温槽内の温度を温度センサでモニタし記録する。

2.4 温度試験による許容差

特に規定のないかぎり温度試験による規格の許容差は次のとおりとする。

恒温槽内温度:モニター用温度センサで±3℃以下

ある温度条件から他の温度条件への変化率:10℃/分以下

図2-1 温度試験装置(出典:パナソニック)

2.5 試験体の設置

試験体を恒温槽内で熱絶縁して設置する。

2.6 温度センサの位置

恒温槽内を制御またはモニタするために使用する温度センサは、恒温槽内のできるだけ中心に取り付ける。

2.7 試験体の動作

試験体は試験中動作させ温度試験による機能・性能上の影響が評価できるようにする。

2.8 試験体の評価

試験の開始、試験中および試験の終了にあたっては、1.7項の性能試験と外観検査を実施する。

図2-2 試験体の設置

2.9 温度試験フロー

3.加速度試験

3.1 目的

加速度試験は使用時において遭遇するであろう加速度条件(重力以外の加速度)を現出しこれに対する試験体の性能を評価することにより安全、信頼性、品質の確証を得ることを目的とする。

3.2 使用装置

加速度試験器(遠心分離機)

3.3 試験方法

試験体を加速度試験用治具を介して加速度試験器に取り付け規定の加速度レベルで互いに直交するX、Y、Z軸に沿って各軸2つの反対方向に対して実施する。

3.4 加速度試験による許容差

特に規定のないかぎり温度試験による規格の許容差は次のとおりとする。

 加速度:±10%

図3-1 加速度試験装置(出典:JAXA)

3.5 試験体の設置

試験体を加速度試験用治具を介して加速度試験器に取付ける。

 

図3-2 試験体前面面への加速度の場合

図3-3 試験体後面への加速度の場合

3.6 試験体の動作

試験体は試験中非動作とし各軸各方向終了ごとに外観検査を実施する。

3.7 試験体の評価

試験の開始および試験の終了にあたっては、1.7項の性能試験と外観検査を実施する。

3.8 加速度の測定法

加速度の決定は、加速度試験器の回転中心と試験体の幾何学的中心との距離を1(m)、加速度試験器の回転数を毎分N(rpm)とすれば試験体に加わる法線方向の(求心)の加速度は以下の式で示される。

3.9 加速度試験フロー

4.衝撃試験

4.1 目的

衝撃試験は使用時において遭遇するであろう衝撃条件(動的衝撃力)を現出しこれに対する試験体の性能を評価することにより安全、信頼性、品質の確証を得ることを目的とする。

4.2 使用装置

衝撃試験装置

4.3 試験方法

試験体を衝撃試験治具を介して試験機に取り付け、規定の衝撃パルスで互いに直交する3軸(X、Y、Z)に沿って各軸1回ずつ実施する。衝撃パルスは加速度計によりオシロスコープでモニタし波形を確認する。

図4-1 衝撃試験装置(出典:OKIエンジニアリング)

4.4 衝撃試験による許容差

特に規定のないかぎり衝撃試験による規格の許容差は次のとおりとする。

4.5 試験体の設置

試験体を衝撃試験用治具を介して試験機に取り付ける。

4.6 加速度計の取付け

加速度計を治具上で試験体のできるだけ近くに固く取付ける。

4.7 試験体の動作

試験体は試験中動作させ衝撃試験による機能・性能上の影響が評価できるようにする。

4.8 試験体の評価

試験の開始、および試験の終了にあたっては、1.7項の性能試験と外観検査を実施する。

図4-2 衝撃パルスの許容差(正弦波の場合)

4.9 衝撃試験フロー

5.振動試験

5.1 目的

振動試験は使用時において遭遇するであろう振動条件(動的な振動応力)を現出しこれに対する試験体の性能を評価することにより安全、信頼性、品質の確証を得ることを目的とする。

※ランダム振動試験

走行中のトラックのタイヤには路面の凹凸が振動として伝わり、その振動がサスペンションを経由して荷台に伝わります。したがって、荷台の振動は典型的なランダム振動になります。つまり、ランダム振動試験は、実際の輸送振動環境を適確に再現する方法です。

5.2 使用装置

振動試験機(加振機)

5.3 試験方法

試験体を振動試験用治具を介して加振機に取付け規定の振動レベルで互いに直交する3軸(X、Y、Z)に沿って実施する。加振レベルは加速度計によりオシロスコープで波形をモニタし同時にコンピュータ処理結果で確認する。

図5-1 振動試験装置(出典:EMIC)

5.4 振動試験による許容差

特に規定のないかぎり温度試験による規格の許容差は次のとおりとする。

振動振幅正弦波±10%
加速度正弦波±10%
振動周波数正弦波±2% ただし 35Hz以下は±0.5Hz
パワースペクトル密度ランダム波500Hz以下 +3dB,-1.5dB
500~2000Hz ±3dB
恒温槽内温度モニタ用温度センサで±3℃以下

5.5 試験体の設置

試験体を振動試験用治具を介して加振機に取付ける。試験ケーブル等は振動等で損傷がないようにストレスリリーフを考慮する。

5.6 加速度計の位置

加速度計は通常サーボ用とモニタ用の2個を使い加速度計取付け用治具を介して固定する。

サーボ用試験体の取付け面上のできるだけ近くに固定する。
モニター用試験体の指定場所または被試験体をはさんでサーボ用の対象位置に固定する。

5.7 試験体の動作

試験体は試験中動作させ振動試験による機能・性能上の影響が評価できるようにする。

5.8 試験体の評価

試験の開始、および試験の終了にあたっては、1.7項の性能試験と外観検査を実施する。

図5-2 ピックアップの取付け位置

5.9 振動試験フロー