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「女性の特性を活かした女性経営者の経営戦略モデルの構築」-ものづくり中小企業における女性経営者の特性を生かした事業承継の在り方を目指して-

第448回 機振協セミナーのご報告「女性の特性を活かした女性経営者の経営戦略モデルの構築」-ものづくり中小企業における女性経営者の特性を生かした事業承継の在り方を目指して-
開催日時 令和4年4月20日 13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催
テーマ 「女性の特性を活かした女性経営者の経営戦略モデルの構築」-ものづくり中小企業における女性経営者の特性を生かした事業承継の在り方を目指して-
講師 岩手県立大学総合政策学部 准教授                              機械振興協会経済研究所 特任フェロー 近藤信一 氏
内容  2022年4月20日(水)にWebシステムより、第448回機振協セミナー「ものづくり中小企業における女性経営者の特性を生かした事業承継の在り方を目指して」を開催しました。講師は、岩手県立大学総合政策学部准教授・機械振興協会経済研究所特任フェローの近藤信一氏にお願いしました。当日は、約30名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 本講演は、近藤氏による「女性経営者の事業承継に関する調査」にもとづく。事業承継は、親族内承継と親族外承継に大別でき、前者は親から子への承継が主流である。親族内承継、親から子への承継に関する事例研究は、主に父親から息子への承継を対象としている。しかし、近年では親から娘への承継も多く、女性経営者が増えている。そして今後、母親(女性経営者)から子(息子や娘)への承継が増えると予想される。そこで近藤氏は、ものづくり中小企業の女性経営者に対するアンケート調査とインタビュー調査を実施し、「女性経営者の特性を活かした経営活動の一場面としての事業承継」の実態とその特徴を把握している。
 本講演では、まず既存のアンケート調査(男性経営者対象)と近藤氏が実施したアンケート調査(女性経営者対象)の結果を比較しながら、事業承継に関する「女性の特性」が抽出・指摘された。ものづくり中小企業の女性経営者は、2代目、3代目と先代から経営を引き継いでおり、創業者の割合は男性に比べて少ない。それゆえに、女性経営者は、男性に比べて、会社に対する「所有欲」が低く、会社を「(社員も含めて)みんなのもの」ととらえ、後継者に引き継いでほしい経営資源として「事業全体」「従業員」をあげる傾向にある。
 こうした女性経営者の特性は、追加インタビュー調査においてもみられた。インタビュー調査結果を加味した考察では、①女性経営者のほうが早期に経営者を退き、事業継承を計画的に行う傾向にあること、②男性経営者が後継者を責任ある仕事に就かせることで育成していくのに対し、女性経営者は社内において実務を学ばせつつ、自らの手で計画的に育てていく「環境が人を作る」教育方針をとる傾向にあることが指摘された。
 最後に、今後の研究方針として、上記の調査結果の相違が性差によるものか、「立場の違い」によるものかを定性データを含めて分析し、「女性の特性を活かした経営戦略モデルの構築」を試みていくことが示された。
 講演後は、参加者との積極的な質疑応答・ディスカッションが展開された。とくに、「女性の特性」のとらえ方について、性差・個人差よりも当該経営者の属性にもとづく教育環境、学歴などが「特性」を説明するのではないかという指摘があった。また、従業員の男女比率や働き方など、産業・企業特性に注目して女性経営者の経営戦略をとらえる必要性があるのではないかとの指摘があり、今後の課題として講演を終えた。