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「食のダイバシティ(多様性)維持のためのロボット活用」

(一財)機械振興協会経済研究所主催 第461回機振協セミナー「食のダイバシティ(多様性)維持のためのロボット活用」オンデマンド配信あり
開催日時 2023年5月29日(月)13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催
テーマ 「食のダイバシティ(多様性)維持のためのロボット活用」
講師 機械振興協会 経済研究所 調査研究部  研究副主幹  森 直子
内容  2023年5月29日(月)に第461回機振協セミナー「食のダイバシティ(多様性)維持のためのロボット活用」を開催しました。講師は、機械振興協会経済研究所の森直子研究副主幹が担当しました。当日は、44名の方々にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

【講演内容】
 本講演では、森がプロジェクトリーダーを務める調査研究プロジェクト「サービスロボット産業の現状と市場形成条件」における令和4年度の調査研究の成果に基づいて、「食」をめぐる諸課題を指摘した上で、「食」のダイバシティ(多様性)を維持するためのロボット活用に向けた提言がなされた。
 まず、「食」をめぐる分野における課題については、食糧生産の担い手の減少と人口増加による「量の貧困」と、効率的な供給・生産が可能な食物への依存や地域の食文化の喪失など「質の貧困」の2つの世界的な課題が存在し、日本においても超高齢化による農水産業人口減、農地の減少、水揚げ量の減少など「量」の貧困へつながる問題や、荒廃農地の増加や地域社会の衰退など「質」の貧困につながる問題が散見されること、農水産業の持続可能性に関わる課題に対するロボットなどの技術を応用した自動化や省力化への取り組みは「総花的」であり、整理をしなければ十分な効果を得られないことなどが指摘された。
 次に、「食」をめぐる産業(農水産業・食品製造業)におけるロボット市場については、食品製造業においてロボットは一定の市場規模をもつ一方、農水産業におけるロボット市場規模は大きくはないことを示しながら、農業分野へのロボット導入における課題については、第一に、大規模農地では自動運転機能付き農機具や自動収穫機(=農業ロボット)が実用化され生産性の向上と効率化が図られている一方、そうした大規模化から漏れる中小零細農家では資金面でロボット導入が困難であること、第二に、有機・自然農法でのロボット活用は食の多様性維持のためにも必要だが、各地で有機・自然農法に携わっている農業法人では類似したロボットを個別・散発的に開発・導入しているため非効率であること、以上の2つが指摘された。また、食品製造業へのロボットの導入における課題については、「地域の食の保護」という観点から、小企業でもロボットを活用して生産の効率化を図ることが必要とされている一方、資金面やIoT人材の不足などが課題として指摘された。そして、農業分野と食品製造業の共通課題に対しては、例えば廉価なロボットアームの開発等が解決策の1つになり得ることが示唆された。
 最後に、食の多様性維持のためのロボット活用に関する提言として、第一に、効率化・最適化とは別の「長期的・社会的評価」といった視点を持つこと、第二に、小規模・零細農業や小規模な食品加工業・飲食店の事業の継続を強化し、彼らを新たな付加価値を生み出す母体とするために、当該分野でのロボット技術(RT)を含めたロボットの活用の方法を真剣に模索すること、第三に、ロボットの個別・散発的開発や開発案件へのカスタムメイドの最適解を目指さず、“カテゴライズされた汎用”ともいうべき適応範囲の広さを確保したロボットの開発、第四に、ロボットの導入によって「食」をめぐる産業に新たな魅力を創出し、新たな就業者を生み出すような広域連携を含むエコシステム構築や仕組みづくりに対する強力な政策的後押し、以上の4つが提示された。
 講演後は、①ロボット産業という枠組みにとらわれず、農業機械や食品加工機械など既存産業の強化という観点におけるロボットやAI技術の活用について、既に大量加工の領域での食品製造分野ではロボットが普及していること、農業機械については大規模農業向けにAI・ロボット技術を活用した制御の最適化、自動運転といった点で製品のアップデートが図られていること、②林業分野におけるロボット活用については、日本の林業が衰退期になった時期にロボット技術が発達したというタイミングの悪さから林業用ロボット産業に国内企業の参入がなされていないという課題があるが、コロナ禍における「ウッドショック」のような有事に備え国内企業の参入が望まれること、③第1次産業におけるロボットの普及や再生には、企業による農漁業への参入規制緩和を含めた制度改革が必要であること、④農業用ロボットにおけるカメラビジョン分野の重要性について、例えばハーベスターでは最適な収穫時期や固体の識別に関する識別を行う際、野外においても正しく対象を識別する技術や少ないカメラ点数で的確に識別する技術が重視されていること、以上の4点について質疑応答が行われ、盛況裏にセミナーを終了した。




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