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再生可能エネルギーを軸にした産業集積の再活性化―中小企業の参入状況と共通価値創出(CSV)の可能性―

第449回 機振協セミナーのご報告「再生可能エネルギーを軸にした産業集積の再活性化」-中小企業の参入状況と共通価値創出(CSV)の可能性-(オンデマンド配信あり)
開催日時 2022年5月25日(水)13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 再生可能エネルギーを軸にした産業集積の再活性化―中小企業の参入状況と共通価値創出(CSV)の可能性―
講師 機機械振興協会 理事 兼 経済研究所所長代理 北嶋 守
内容  2022年5月25日(水)にWebシステムより、第449回機振協セミナー「再生可能エネルギーを軸にした産業集積の再活性化―中小企業の参入状況と共通価値創出(CSV)の可能性―」を開催しました。講師は、機械振興協会経済研究所の北嶋守所長代理にお願いしました。当日は、56名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 本講演では、北嶋がプロジェクトリーダーを務める調査研究プロジェクト「脱炭素社会に向けた国内産業集積の発展戦略に関する調査研究」(令和3年度)の概要とケーススタディの内容、現時点での考察についての報告をおこなった。このプロジェクトの目的は、脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現が目指される今日の国内再生可能エネルギー関連機器の動向および中小企業の新規事業展開に関する実態を把握し、脱炭素社会に向けた地域産業集積の再活性化策を提示することである。本調査研究の特徴は、企業の取り組みだけでなく、自治体関係者や地域住民など、地域経済社会における脱炭素化への取り組みを総合的に捉えている点である。したがって、プロジェクトメンバーは、経営学、地域経済地理学、地域振興の専門家など多岐にわたる。本講演では、各メンバーから提示された事例、とりわけポテンシャルの高いバイオマス発電(みやま市バイオマスセンター「ルフラン」・福岡県みやま市、真庭木材事業組合・岡山県真庭市)、小水力発電(小沢川小水力発電事業への協力体制・長野県飯田市)、地熱発電(かたつむり山発電所・秋田県湯沢市、木地山地熱発電所・秋田県湯沢市)、洋上風力発電(秋田県)に関する事例報告があった(詳細は「事前配布資料」を参照)。 これらの中小企業は、若手経営者を中心に、地域内外のネットワークを活用しながら、再エネ分野に積極的に参入している。しかし、全国的にみると中小企業の再エネ分野への参入率は低い。その理由として、再エネ機器の量産化が難しいなどのキャパシティーの問題や参入に必要な支援・施策に関する情報不足などがあげられる。そこで重要な考え方が「共通価値の創出」(CSV)である。中小企業がCSVに取り組むうえで重要な点は、社会的問題やニーズの探索、関連分野バリューチェインの把握と自社のポジショニングであり、地域での協働やクラスターの形成が有効な方法となる。再エネによる産業集積・再活性化のポイントは、①地域特性に応じた再エネ分野の選択と組み合わせ、②サプライチェインの構築、③地場産業との連携、④FIP(Feed-in Premium)制度を活用した採算性の確立、⑤技術者、アグリゲーターなどの人材育成、⑥都道府県レベルでの情報提供、⑦産業クラスターの形成、⑧CSV経営の確立であり、キーワードは「地域の多様なアクターによる“地域経営”」である。
脱炭素社会の実現は、人びとの長期的・継続的な行動・活動が不可欠である。人間の行動や活動は、一人一人の腑に落ちるものでなければ長続きしない。しかし、脱炭素社会の実現やCSVは、身近な他者を尊重する「日本型資本主義」や「三方よし」、相互扶助の精神である「結」(ゆい)といった伝統的な日本の精神的基盤に通じるものがある。これらの精神的基盤が辛うじて残っている「日本の地方社会」こそ、脱炭素社会のフロンティアなのではないだろうか(詳細は「補足資料」を参照)。
講演後、プロジェクトメンバーからの補足と参加者からの情報提供、質疑応答があり、活発なディスカッションが行われた。そのなかで、バイオマスエネルギーにおける熱利用との組み合わせや他産業との連携など、地域一体となった経営が必須であるとの指摘があった。また、再エネ資源が不足している地域では、環境関連装置・機器の開発・ものづくりという重要な役割があるとの指摘があった。今後、フィールドワークをもとにケーススタディをまとめていくという方針が示され、講演を終えた。


このセミナーはオンデマンド こちらで視聴できます。

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【事前配布資料】
【補足資料】