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透明材料表面層の物性評価技術に関する研究(平成19年度研究概要)

1.実施内容

高品質な加工面を得るためには表面粗さや形状精度などの幾何学的品質だけでなく、加工変質層の物理化学的・材質的品質の評価が重要であり、これまでラマン分光による評価を進めてきた。近年、様々な分野・用途において優れた特性を有することから注目されているワイドギャップ半導体などの評価が重要な課題となりつつある。しかし、透明材料は光が試料内部まで侵入することから、表面層からの信号を得ることが困難である。このことから透明材料の加工表面層の評価技術の要素技術の開発、評価法の確立を行うことが本研究の目的としました。

ラマン分光法において励起光をより波長の短いレーザーを用いることを検討しました。紫外ラマン分光測定のための分光装置の改良・整備を行い、具来的には、ミラー、レンズなどの光学部品などの紫外域での分光特性評価などや、光源の評価、紫外領域での測定のための波長切替システムの設計、製作、検出器の特性評価を行いました。ワイドギャップ半導体として代表的な半導体である炭化珪素、ダイヤモンド、珪素ガラスなどの測定を行い基礎データの取得を行いました。また、紫外領域のラマン分光評価に関する研究動向・要望などについて、大学・公的研究所・メーカからの調査も行いました。

紫外光励起による表面層評価の模式図

図1 紫外光励起による表面層評価の模式図

レーザ顕微鏡・ラマン分光複合装置

図2 レーザ顕微鏡・ラマン分光複合装置

全固体深紫外レーザ
図3 全固体深紫外レーザ

2.予想される事業実施効果

研究成果の発表などを通して多くの問い合わせがあった。ラマン分光測定において、励起波長の選択は非常に重要であり、より多様な材料を対象とした、加工面の評価が可能となり、今後さらにその重要性が増してくると考えられる。また、紫外ラマン分光は様々な分野で注目をされいる手法であるが、これまではそのレーザーの取扱いの困難さから、一般に用いられてこなかった。本研究では、ラマン分光法への適用例はないが、半導体検査装置として実績のある全固体連続波レーザーに着目し、製造メーカーからの支援をうけて、ラマン分光への適用を試み、これまでの測定と比べて非常に簡便に紫外ラマンを行えることが可能であることを示した。これによって、加工面の評価のみならず広い分野への適用が期待される。

3.本事業により作成した印刷物等

(1)報告書

<KSK-GH19-2> 計測標準高度化に関する研究 高品質加工表面層評価に関する研究

(2)解説記事

No 題目 発表者名 掲載誌名 巻号
1 共焦点顕微鏡・ラマン分光複合装置による応力・歪測定 山口誠
上野滋
検査技術 vol.12,No.12 (2007) p.12
2 ナノインデンテーション試験高度化に向けた新手法 藤塚将行
山口誠
上野滋
月刊トライボロジー 2月号,2008,p.20

(3)学会誌査読論文・国際学会査読論文

No 題目 発表者名 発表会名 巻号
1 Amorphous structure of ripples on SiC studied by micro Raman spectroscopy Makoto YAMAGUCHI, Shigeru UENO, Ryota KUMAI, Keita KINOSHITA, Takuro TOMITA, Shigeki MATSUO, Shuichi HASHIMOTO Proceedings of LPM2007-the 8th International Symposium on Laser Precision Microfabrication 2007, Apl., p.221
2 TEM Observation of Structural Changes under 4H-SiC Single Crystal Surface Irradiated by Femtosecond Laser Pulses Tatsuya OKADA, Hiroyuki KAWAHARA, Ryota KUMAI, Takuro TOMITA, Shigeki MATSUO, Shuichi HASHIMOTO and Makoto YAMAGUCHI Proceedings of LPM2007-the 8th International Symposium on Laser Precision Microfabrication 2007, Apl., p. 65
3 Experimental Mechanical Stress Characterization of Micro-Electro-Mechanical-Systems Device Using Confocal Laser Scanning Microscope Combined with Raman Spectrometer System Makoto YAMAGUCH, Shigeru UENO, Ichiro MIURA, and Wataru ERIKAWA Japanese Journal of Applied Physics Vol. 46, No. 10A, 2007, pp. 6860-6862
4 MEASUREMENT OF A RESIDUAL IMPRESSION BY THE LASER SCANNING MICROSCOPE WITH DIC UNIT Masayuki Fujitsuka , Makoto Yamaguchi, Shigeru Ueno, Genichiro Kamiyama, Shigeo Katayama Proceedings, HARDMEKO 2007
Recent Advancement of Theory and Practice in Hardness Measurement
2007, Nov., p.136

(4)口頭発表論文・誌上発表

No 題目 発表者名 発表会名 発表日
1 Amorphous structure of ripples on SiC studied by micro Raman spectroscopy Makoto YAMAGUCHI, Shigeru UENO, Ryota KUMAI, Keita KINOSHITA, Takuro TOMITA, Shigeki MATSUO, Shuichi HASHIMOTO LPM2007-the.8th International Symposium on Laser Precision Microfabrication 2007.4.24
2 TEM Observation of Structural Changes under 4H-SiC Single Crystal Surface Irradiated by Femtosecond Laser Pulses Tatsuya OKADA, Hiroyuki KAWAHARA, Ryota KUMAI, Takuro TOMITA, Shigeki MATSUO, Shuichi HASHIMOTO and Makoto YAMAGUCHI LPM2007-the.8th International Symposium on Laser Precision Microfabrication 2007.4.26
3 共焦点顕微鏡・ラマン分光複合装置による応力・結晶性の評価 山口誠 ラマン分光による最先端解析に関するシンポジウム 2007.5.17
4 Si,SiCおよびHOPGにおけるリップル断面形状の直接観察 熊井亮太、富田卓郎、松尾繁樹、橋本修一、山口誠 第68回応用物理学会学術講演会 2007.9.4
5 MEASUREMENT OF A RESIDUAL IMPRESSION BY THE LASER SCANNING MICROSCOPE WITH DIC UNIT Masayuki Fujitsuka , Makoto Yamaguchi, Shigeru Ueno, Genichiro Kamiyama, Shigeo Katayama HARDMEKO 2007
Recent Advancement of Theory and Practice in Hardness Measurement
2007.11.19
6 レーザー誘起ナノ周期構造の断面形状と物性解析 富田 卓朗, 河原 啓之, 熊井 亮太, 川本 昌子, 山口 誠, 岡田 達也, 松尾 繁樹, 橋本 修一 日本物理学会年次大会 2008.3.26
7 フェムト秒レーザ照射により誘起された4H-SiC表面周期構造の断面TEM観察 岡田 達也, 河原 啓之, 熊井 亮太, 富田 卓朗, 松尾 繁樹, 橋本 修一, 山口 誠, 川本 昌子 日本金属学会2008年春期大会(武蔵工業大学) 2008.3.28