研究会・イベントのご報告 詳細
「ものづくり中小企業における女性経営者の人材戦略モデルの模索」
主催:(一財)機械振興協会経済研究所主催 第484回機振協セミナー「ものづくり中小企業における女性経営者の人材戦略モデルの模索」開催報告 オンデマンド配信あり | |
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開催日時 | 2025年5月26日(月)14:00~15:30 |
場所 | WEBシステムにより開催(Zoom) |
テーマ | 「ものづくり中小企業における女性経営者の人材戦略モデルの模索」 |
講師 | 講師:岩手県立大学総合政策学部・大学院総合政策研究科 教授 機械振興協会経済研究所 特任研究員 近藤 信一氏 モデレーター: 機械振興協会 理事 兼 経済研究所 所長代理 北嶋 守 |
内容 |
2025年5月26日(月)にWebシステムより、第484回機振協セミナー「ものづくり中小企業における女性経営者の人材戦略モデルの模索」を開催しました。講師は、岩手県立大学総合政策学部大学院総合政策研究科教授・機械振興協会経済研究所特任研究員の近藤信一氏にお願いしました。またモデレーターは機械振興協会理事兼経済研究所所長代理の北嶋守が務めました。当日は、42名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。【講演内容】従来の中小企業の人材戦略に関する研究では、その多くが、ものづくり中小企業の男性経営者の人材戦略が研究対象となっている。本講演は、女性経営者のための「ものづくり中小企業の女性経営者の人材戦略モデル」を構築することで、女性経営者にとっての人材戦略の指針となることを目指している。冒頭では、本研究の背景について説明がなされた。講師である近藤信一氏は、コロナ禍以降「女性の特性を活かした経営戦略モデルの構築」をテーマに、親子での事業承継における父母それぞれの影響の違いや、女性経営者のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略に関する調査を行ってきた。本研究ではその一環として、女性経営者の人材戦略に焦点を当てている。 本研究では、独自にアンケート調査とインタビュー調査を実施した上で、調査対象の多くが男性経営者であると考えられる既存のアンケート調査との比較分析を行った。なお、調査にあたっては、一般社団法人ものづくりなでしこと共同契約を締結し、インタビュー調査では人材担当者にも同席を依頼することで、より詳細な情報の収集に努めた。 上記分析の結果、女性経営者に特有の傾向が以下のように明らかとなった。 第1に、採用では、女性経営者は女性や外国人の採用に積極的であり、真面目さや前向きさを重視し、賃金や業務負担などの労働条件・環境整備よりも社内の情報共有や働きやすさを重視する傾向が示された。さらに、人手不足への対応では、新規採用よりも既存社員の教育やITによる業務標準化による生産性向上を重視していた。 第2に、人材育成においては、ダイバーシティ推進を特別な課題とは捉えず、基礎的な社会常識や仕事への意識を育てる教育に重点を置き、その一部として実施していた。また、長期的な視点から人材育成の仕組みを構築するとともに、部分的かつ焦点を絞った育成を進め、中堅層の育成を強化したいと考える傾向が見られた。能力開発に関しては、社員の自発性に委ねるよりも、会社の指示に基づく研修を重視し、業務命令として研修を受けさせることで、実施率を高めるといった戦略を取っていた。 第3に、組織管理では、男性経営者が多くの課題を抱えるのに対し、女性経営者は比較的課題が少ないと認識していた。しかし、ミドルのマネジメント層の将来的な育成と次世代を担う人材の育成については重要な課題として捉えていた。 全体的として、男性経営者は制度を作り自主性に任せるといった「形」を作ることを優先する一方、女性経営者は形にはこだわらず会社主導で実効性のある「実」を取りに行く傾向が強いことが示された。また、女性経営者は中小企業において優秀な人材が限られることを現実として受け入れており、その前提に立って採用よりも既存社員の教育に注力し、人格形成や人間力の育成する重要視する姿勢が見られた。 さらに、講演の最後には本研究の活用方法についても説明がなされた。男性経営者による人材育成をまとめた従来の人材育成モデルを女性経営者が導入した場合、自身の特性にそぐわない戦略となり、結果として人材育成がうまく機能しない可能性がある。本研究では、女性経営者のための「ものづくり中小企業の女性経営者の人材戦略モデル」の一部を明らかにできた。この成果は女性経営者にとっての人材戦略の指針となることが期待される。 講演後には質疑応答が行われ、本調査と比較するために用いた既存調査の調査対象や、女性経営者の現場経験に関する質問が寄せられた。また、今後の調査の展望として、企業の長期的な業績に対する女性経営者の影響を検討していることや、本調査が将来的に性格診断や適性判断と融合させることで応用・発展可能かどうかについても議論が交わされ、盛況のうちに終了した。 ※解像度は画面右下の[360P]をクリックして高画質等にご調整ください。 このセミナーの資料はこちら↓からご覧になれます。 【セミナー資料】 |