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「我が社におけるDX推進への挑戦」

主催:(一財)機械振興協会経済研究所主催 第493回機振協セミナー 「我が社におけるDX推進への挑戦」 開催報告
開催日時 2026年2月3日(火)13:30~15:00
場所 WEBシステムにより開催(Zoom)
テーマ 「我が社におけるDX推進への挑戦」
講師 講師:株式会社共進 代表取締役社長 五味 武嗣 氏                                     モデレータ:(一財)機械振興協会 理事 兼 経済研究所所長代理 北嶋 守
内容 2026年2月3日(火)にWebシステムより、第493回機振協セミナー「我が社におけるDX推進への挑戦」を開催しました。講師は、株式会社共進代表取締役社長の五味武嗣氏にお願いしました。なお、コメンテーターは、機械振興協会理事兼経済研究所所長代理の北嶋守が務めました。当日は、74名にオンラインでご参加いただきました。ご参加いただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。


【講演内容】

 本講演は、五味氏が代表取締役を務める株式会社共進における実体験をもとに、同社のIT化・IoT化の取り組みや、DX化を進める難しさについて紹介された。

 本講演の冒頭では、株式会社共進の企業紹介が行われた。同社は長野県諏訪市に拠点を置く、従業員約130名の金属加工企業であり、自動車向け部品を中心に、建機・産業機械、医療機器分野へと事業を広げている。近年では、特に小径・小型部品の加工技術を強みとし、大学や医療機関と連携した医療機器部材(カテーテルなど)やゴルフの練習器具(インパクトゾーントレーナー)の開発にも力を入れている。また、DXに関する同社の取り組みは、2023年に経済産業省DXセレクションに選定されている。
 続いて、同社の中核技術である「カシメ接合技術」について詳しく説明がなされた。カシメ接合技術は、従来は削り加工により製造していた製品に対し、2種類以上の部材を機械的に接合し製造する同社独自の手法であり、材料使用量や加工時間を大幅に削減できる点に特徴がある。常温加工であるため品質安定性が高く、分解・リサイクルが容易で、SDGsの観点からも有効であるという。
 その後、DXの定義とIT化・IoT化との違いについて整理が行われた。DXとは単なる効率化ではなく、デジタル技術を用いて顧客視点で新たな価値を創出することであり、改善活動にとどまるIT化・IoT化とは本質的に異なると強調された。また労働人口減少、労働時間短縮、賃金上昇といった社会背景を踏まえると、DXへの対応は中小企業にとって不可避であると述べられた。
 同社の具体的な取り組みとしては、温湿度自動測定、材料在庫のAI画像認識、加工機械の異常停止時の通知など多様なIT化・IoT化事例が紹介された。一方で、少量注文に対する受注予測では予測値と実際の受注との乖離が大きかったことや、作業日報のタブレット化においては現場負担が増えたこと、導入目的が従業員に十分浸透しなかったことから定着に至らなかったことなど、失敗事例も率直に語られた。
 その中で、唯一DXと位置づけられたのが「AIによるカシメ条件推定システム」である。従来の工程では、顧客が求める破壊強度を満たすために、多数のサンプル試験を行いながら製品仕様を決定していた。しかし、AIによるカシメ条件推定システムでは、シミュレーションソフト上で製品を破壊し、実験データを取得することが可能となった。これにより、顧客要求を超える性能提案や小型化・軽量化を実現でき、高付加価値創出につながっていると説明された。
 講演後半では、DXを推進した感想として3点が挙げられた。第1に、同社の取り組みはIT化・IoT化に留まっており、目的や目標を明確化した上で、ビジネスモデルの変革や新しい価値の創出へと発展させていく必要があること。第2に、狭い範囲でのIT化やIoT化は比較的成功しやすいものの効果は限定的であり、関与する人数が増えるほど難易度が高まること。第3に、自社単独ではどうしてもデジタル技術や知見がなく取り組みが進まないため、支援機関等を積極的に利用すべきであることが述べられた。
 最後に、DX推進には、セキュリティ対策が不可欠であることや、IT・AIを活用した自動化が人の働きがいと企業価値向上の両立につながることについても触れられ、講演を締めくくられた。

 講演後は、活発な質疑応答が行われ、簡単なツールを使って高い効果を生んだ事例の紹介や、社内では手を挙げた人が主体となってデジタル化を進めていること、入出庫の頻度が高い原材料においては入荷数と出荷数の比較だけでは在庫の把握が難しいことなどについて議論がなされ、盛況裡に終了した。