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No.3:「リチウムイオン電池の調査に関する情報源」

機械工業図書館 資料ガイド (2006年12月)

※印のついたリンクは、末尾の解説へジャンプします。

2006年6月に国内でノートパソコンから発火する事故が発生し(注1)、その後、事故の原因がバッテリーとして搭載されたソニー製のリチウムイオン電池にあることが判明した。また11月には、携帯電話に搭載されたリチウムイオン電池(三洋ジーエスソフトエナジー社製)が充電中に破裂・加熱するなどの事故が18件確認され(注2)、新聞報道等で大きく採り上げられた。
(注1):2006/8/15日本経済新聞(夕刊)第3面 、(注2):2006/12/08日本経済新聞(朝刊)第3面

事故に関する報道について知る

インターネットで『日経goo』※を利用して、事故に関する新聞記事を調べる。「リチウムイオン電池」、「発火」、などをキーワードとして検索すると、新聞記事の見出しが表示され、各事件の報道から、各メーカーの対応状況、回収による損失、専門家によるコメント、株価への影響など、事故発生からその後の流れを知ることができる。なお今回、一連の事故の発生と報道を受け、ソニー・三洋の両社とも電池パックの回収を実施したことから、今後の市場動向、営業利益や株価への影響は避けられないと見られている。

電池とリチウムイオン電池の基礎知識について知る

まず産業においてリチウムイオン電池という製品がどのような位置付けにあるのか、『日本標準産業分類:平成14年3月改訂版』※を調べると、リチウムイオン電池は「27:電気機械器具製造業」の「2791:蓄電池製造業」に分類されていることがわかる。ちなみに一次電池は「2792:一次電池製造業」、太陽電池等の物理電池は「2799:他に分類されない電気機械器具製造業」に分類されている。

また『全国各種団体名鑑』を産業分類でたどると、電池に関する団体として「(社)電池工業会」の存在を知ることができる。

(社)電池工業会のパンフレット、また電池に関する解説書によると、電池は一次・二次・燃料電池が含まれる化学電池、太陽電池が主である物理電池、酵素・微生物電池が含まれる生物電池に分けられる。一次電池は使い切りの電池(いわゆる乾電池はこの一つ)であり、対して二次電池は充電することで繰り返し使える電池で、蓄電池、充電式電池とも呼ばれる。リチウムイオン電池は、リチウム二次電池の一種で、1991年頃から生産が始まり、「超軽量でありながら、高電圧・大電力、しかも自己放電率の少ない」※4という特性から、ノートパソコンの他に、携帯電話やデジタルカメラのバッテリーとして利用されている。

リチウムイオン電池市場の動向・今後について知る

『日本標準産業分類』で分かった分類番号をもとに、経済産業書のウェブサイト内の、「統計」を調査する。
特に生産状況の推移を知るために「工業統計アーカイブス」をみると、ここ3~4年でリチウムイオン電池の生産量、出荷量共に倍増しているが、金額はやや減少していることから、製品単価が下落していることが分かる。また電池工業会のサイト上にある推計(注)3に依ると、2005年のリチウムイオン電池総生産量は全体の15%、生産額は41%を占めていることがわかる。

(注3):「電池の総生産(2005年)」より引用(URL:http://www.baj.or.jp/statistics/01.html)
また輸出に関するデータについて、『輸出統計品目表』※の索引から「蓄電池」でHS分類を調べると、リチウムイオン電池は「第16部:機械類及び電気機器>第85類:電気機器…>8507.80:その他の蓄電池>8507.80.200:リチウムイオン電池」に分類されていることが分かる。この品目コードをもとに、インターネット上の財務省の「貿易統計」※や日本貿易振興機構(ジェトロ)の「貿易統計データベース」※、日本関税協会発行の『日本貿易月表』※等を用いて、各国間との輸出入の状況について調べることができる。ここ数年のリチウムイオン電池の輸出に関しては、輸出数量は依然として増え続けているものの、輸出金額は2003年をピークに若干下がっている。このことからも、製品単価が下落傾向にあることがわかる。

前述で調査した新聞報道によると、世界リチウムイオン電池のシェアについて、現在1位は三洋電機、2位がソニーで、両社の合計シェアは5割を超すと推測されている(注4)。『日経マーケットアクセスレポート:サプリメント』の2005年11月号における調査を合わせて推測すると、3位以下は韓国サムスンSID、松下電池工業、中国BYD社、韓国LG社などが続くと考えられるが、最近は特に中国メーカーの台頭が目立ってきており、今回の事故をきっかけに、今後はより混戦状態となることも予想されている。

(注4):2006/12/08日本経済新聞(朝刊)第3面

リチウムイオン電池に関する関連団体

(社)電池工業会(Battery Association of Japan)
…電池全般を取り扱う工業会。1997年に、(社)日本蓄電池工業会と(社)日本乾電池工業会を統合して設立された。ウェブサイト上のコンテンツ「電池の知識」では、電池の歴史、種類・特徴・用途、構造、規格、等について解説している。また、電池に関する統計、規格、最新の技術動向も、ウェブサイト上で随時公開している。「統計」では、機械統計に基づいた電池に関する統計の他に、自主統計として「携帯電灯、電池器具」に関する統計データも公表している。機関誌として、『でんち』※を毎月発行している。

(社)電子情報技術産業協会(JEITA)
…「電子機器、電子部品の健全な生産、貿易及び消費の増進を図ることにより、電子情報技術産業の総合的な発展に資し、我が国経済の発展と文化の興隆に寄与することを目的とした業界団体」として設立された。
今回、ノートパソコンに搭載された電池による発火事故が起きたことから、ノートパソコンの安全性の問題に関わるものとして、リチウムイオン電池の安全性に関する委員会を設置し、ガイドライン等の策定を進めている。ウェブ上での公開情報は、次の通り。

「ノートPCリチウムイオン電池安全利用特別委員会」活動について (JEITA)
URL:http://it.jeita.or.jp/perinfo/committee/pc/battery/index.htm
「バッテリ関連Q&A集」(JEITA)
URL:http://it.jeita.or.jp/perinfo/committee/pc/battery/menu1.htm

有限責任中間法人 JBRC
…資源有効利用促進法に基づき、「小形充電式電池の回収から再資源化までのリサイクル活動を推進し、循環型社会の形成に貢献」を目的とした団体。ウェブ上で公開されている年度報告では、小型二次電池の回収実績ならびに再資源化実績のデータを知ることができる。

「JBRC年度報告(回収実績ならびに再資源化実績データ)」
URL:http://www.jbrc.net/hp/contents/jbrc/frm_nendo.html

紹介した資料

のマークは機械工業図書館で所蔵する資料、はインターネット上でご覧いただける資料です。
資料名末尾の[ ]内の番号は、機械工業図書館の分類番号です。

『日経goo』日経4紙記事検索
URL:http://nikkei.goo.ne.jp/nkg/fnews_detail_top.jsp
…日本経済新聞、日経産業新聞、日経流通新聞MJ、日経金融新聞4紙の、過去1年分の記事を検索できる。但し無料で表示できるのは記事の見出し、掲載紙・掲載日時などの書誌データまでで、記事本文の表示は有料となる。(注:機械工業図書館では、日本経済新聞、日経産業新聞、日経流通新聞MJを所蔵しております。日本経済新聞及び日経産業新聞については、バックナンバーとして縮刷版も保存しております)

『日本標準産業分類:平成14年3月改訂版』総務省統計局統計基準部、[H.025.1.-]

『全国各種団体名鑑 2006年版』シバ、隔年刊、[D.-.1.-](※カウンター内に配架)
…国内の各種団体・約6万団体のデータを収録したダイレクトリ。所在地及び連絡先、ホームページアドレス、設立年月、設立目的、事業内容、所管・関連省庁、刊行物、支部、関連団体等のデータが掲載されている。分類別に上・中・下巻に分かれており、さらに50音順の索引がある。

『WE LOVE DENCHI』(社)電池工業会[キャビネット展示資料]
URL:http://www.denchi.info/archive/we_love_denchi.pdf
…電池工業会発行の広報誌で、電池のしくみ、種類、形や中身、正しい使い方、そして電池の歴史などを簡単にまとめ、わかりやすく紹介した小冊子。工業会のウェブサイトからも閲覧できる。

『電池のサイエンス-くらしをささえる名脇役』岡田和雄・著、森北出版、1997年[H.7.-.58]
…電池の誕生から開発の歴史を紹介し、種類別にその仕組みや用途をわかりやすく解説している。
リチウムイオン電池に関しては、基本的な特徴・構造のみの紹介にとどまっているが、初心者でも理解しやすい解説となっている。

『電池応用ハンドブック:各種電池の基礎知識から電池応用回路・充放電マネージメント・システム活用資料集まで』 トランジスタ技術編集部・編、2005年、[H.7.-.58] 
…各種電池の基礎知識から二次電池、および充電に関する基礎知識、電池動作のための回路の解説書。特に二次電池に関する記述は多様で詳しい。図表を交えた教科書的な構成で、全体的に読みやすくなっている。リチウムイオン電池に関しては、充電回路や電池パックについての記述もあり、さらに巻末の「電池活用資料集」では、各メーカーの製品の仕様が掲載されている。

『最新電池ハンドブック』D.リンデン・編、高村 勉・監訳、朝倉書店、1996年、[H.7.-.58]
…電池に関する唯一の技術書である『Handbook of batteries:2nd edition』を翻訳したもの(原書の最新版は『Handbook of batteries:3rd edition』)。ほぼ全種類の電池に関して、特長・性質・特性などを詳細に解説しており、大変高度な、技術者向けの内容となっている。巻末には参考として統計資料もあるが、1996年発行のため統計データとしては古い。しかしリチウムイオン電池に関しては、原書の翻訳に対してさらにオリジナルの解説を加え、国内のメーカー各社にアンケートを行うなど、綿密な分析・調査が加えられている。

『統計』 経済産業省ウェブサイト
URL:http://www.meti.go.jp/statistics/
『工業統計アーカイブス』 経済産業省ウェブサイト
URL:http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/archives/index.html
…経済産業省が実施する各種統計調査の結果を公表している。生産動態統計に関しては、エクセルファイル又はPDFファイルでのダウンロードが可能で、冊子の月報より速く公表されるが、当年分の月次版と前年分のデータしか掲載されていない。また、工業統計調査に関しては「工業統計アーカイブス」として、1909(明治42)年から直近までの、公表当時の統計表をエクセルファイル又はPDFファイルで掲載している。(注:機械工業図書館では、各種生産動態統計の月報・年報類及び『工業統計表』を冊子形式で所蔵しております)

『輸出統計品目表』輸出統計品目表編纂委員会 編、日本関税協会、年刊、[H.025.1.-]
※輸入については『現行輸入制度一覧』経済産業調査会、年刊、[H.363.1.-]を参照

『貿易統計』財務省ウェブサイト
URL:http://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm
…財務省による、統計の公式サイト。公表が速く、PDF・CSVファイルのダウンロードも可能。「概況品情報」による検索では品目名が参照できるので、品目コードが分からなくても検索ができる。

『貿易統計データベース』日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト
URL:http://www3.jetro.go.jp/cgi-bin/nats/cgi-bin/top.cgi?PGID=000&REP_CNT=0
…貿易統計の円値を毎月のレートで換算してドル値を作成し、公表しているのが特徴。HS分類に準拠しているが、大分類・中分類は独自の分類で振り分けられており、分類に詳しくない場合でも検索がしやすいように工夫されている。

『日本貿易月表(品別国別)』日本関税協会、月刊、[統計雑誌]

『日経マーケットアクセスレポート(付・サプリメント)』日経BPコンサルティング、月刊、[雑誌]
…IT産業の全般に関する最新市場動向のデータベース『日経マーケットアクセス』の冊子レポート版。国内外の工業会や調査会社のレポートから、最新の統計・市場データをピックアップし、図表と合わせて掲載している。

『でんち』(社)電池工業会、月刊、[雑誌]
URL:http://www.baj.or.jp/denchi/index.html
…電池工業会の機関誌。工業会の活動報告の他に、電池業界に関する動向、新製品ニュース、電池に関する基礎知識などを掲載している。また、巻末には[電池および器具販売実績(機械統計)],[電池輸出入実績(財務省貿易統計)]として機械統計,貿易統計のデータを転載している。電池工業会のホームページから、PDFファイルで全文閲覧することができる。

その他関連資料・リンク

『燃料電池』燃料電池開発情報センター、季刊、[雑誌]
…燃料電池に関する情報誌。特集やトピック的な技術情報の他、解説、基礎講座、などを掲載。

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URL:http://it.nikkei.co.jp/pc/special/sonybattery.aspx