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調査研究報告書 詳細

半導体とデバイス製造装置の新たな産業戦略を求めて―人材力が日本を足掛りに世界に向けて発揮されるために―

報告書No. H16-3
発行年月 : 平成17年3月



Ⅰ 主要目次

 第1章 最悪期は脱したが「構想力」に欠けるわが国半導体産業
 第2章 今強くても「将来軌道」に迷うデバイス製造装置産業
 第3章 半導体とデバイス製造装置の新たな産業戦略を求めて
 おわりに ― 「シリコン・シーベルト」と産業クラスタ資料編

Ⅱ 概要 

 わが国の電子デバイス製造装置産業は、機械産業の中でも競争力の高い分野だが、「将来軌道」は不透明になりつつある。従来は半導体等デバイスの国内企業が、世界先端的ユーザとして先行世代の製造装置開発を指導してきたが、デバイスメーカ自身、プロセスの先端技術開発を、採算上、1-2社を除いて続けられなくなっている。すなわちデバイス側も製造装置側も共に、「将来軌道」が不透明になっている。そうした現状に対して、いかなる「構想」を立てるべきかを検討した。

 まず半導体産業の現状認識(第1章)。一般には、半導体の先導的用途が、PCからデジタルコンシューマへ広がってきたことで、国内に松下やソニーなどの世界的セットメーカを抱える「日系」半導体一貫メーカ(IDM)が有利と言われる。だが実態は、デジタルコンシューマが世界でブームになればなるほど、日系IDMの世界シェアは落ちている。反対に、台湾やシリコンバレーの半導体設計専業メーカ(ファブレス)が、中国等の現地セットメーカと組みながら、アジアの半導体受託製造専業企業(ファンドリー)による低コスト生産力を利用しつつ、世界デファクトにのし上がっている。松下やソニーは、中枢LSIの内製モデルで存立可能である。だが世界デファクトのもう一つの雄となるファブレスは、競合可能性がない独立系専業ファンドリ以外には、戦略チップの製造を委ねることはない。よって日本における先端ロジック系システムLSIは、数社だけに限られた、非常に狭い範囲に終始し、機会逸失する懸念が極めて大きい。

 他方、デバイス製造装置産業の認識(第2章)。液晶デバイス等が伸び、その製造装置も伸びているが、半導体と比べれば、数年後でも15%前後までしか達しない。業界全体としては半導体の牽引力がなお重要である。その半導体で、日本は冒頭のような状況にある。日米欧の主要装置メーカは、「売上」は海外向けが6-7割を超えてグローバル化しているが、先行装置の「開発・製品化」では、国内先端ユーザー(デバイスメーカ)密着で進んでいる。加えて米欧は、日本勢が各社個別連携だけでしのごうとしてきたのに対し、日本より戦略的に振舞っている。日系装置メーカも、戦略的振舞いが不可欠である。

 以上を踏まえ、1)国内に世界先導的なロジック対応独立ファンドリが1社は必要だろう; 2)日本のデバイス製造装置メーカ有志は、当該ファンドリとの戦略連携によって世界先導的プロセス装置の製品化にコミットすべき; 3)ほかに製造装置有志は、IT活用によって各種装置と工場レベルを縦横に結ぶ試みに対し、共同実証に取組むべき; 等を業界関係者に提言した(第3章)。


概要版(pdf)